長鳴鳥(ながなきどり) 東京支部長 深沢 功
明けましておめでとうございます。しかし、この言葉をつかうのには若干の躊躇があります。
私たちを取り巻く環境が急速に悪化しているからです。
今年は昨年よりも、そして来年はさらにこの傾向は加速してゆくはずですから、
「おめでとう」と言って良いのか迷います。
三島由紀夫の遺作となった「天人五衰」という小説があります。
「天人五衰」とは、天人の、清らかだった衣服が垢にまみれ、
盛りであった頭上の華が萎(しぼ)み、両腋窩から汗が流れ、
身体がいまわしい臭気を放ち、本座に安住することを楽しめない、
という天人に突然起こる五つの衰えをいうそうです。
ひとたびこれがはじまると、天人の弾く箏や鼓は音をださず、
軽やかに空を飛ぶ自由は失われて、もはや死を避けることはできないのだそうです。
我々の文明にもこの五衰が始まったのではないでしょうか。
36年前三島は天才的な文学者の直感で、
文明の衰亡を予見し、天人の五衰になぞらえ小説にしたのだと思えてなりません。
そして1970年11月25日、最後の章を書き終え脱稿後に自決しました。
『体と精神の奥底でまたたきつづけていた火が今消えたのである』とは、
現代文明を支え続けていた火が消えた、と言い替えてもよく、
そして天人が自分の身体から立ちのぼる腐臭を嗅ぎ分けたように、
環境、政治、経済、社会、教育、軍事・・などの各方面で起こっている異常な現象は、
文明が腐り始めている証ではないかと思えるのです。
しかし、嘆くには当たりません。
インドの古代ヒンズー経の教えでは、歴史を4つに時代を分けています。
サトユガ、トレタユガ、ドゥヴァパラユガ。カリユガといいます。
別名、金、銀、銅、鉄の時代といわれ、
金の時代は真理の光が100%人々の心を照らしていた時代、
銀の時代はその光の25%が失われた時代、
そして、銅の時代が50%、最後の鉄の時代は光が75%失われてしまった時代だといいます。
このカリユガ(鉄の時代)の特徴は
「虚偽が人生を成功させ、金銭が地位を決定し、性愛のみが喜びとなる」といわれています。
まさに現代です。
中国の黄帝内経、素問でも、上古には「真人」、中古には「至人」、
その次には「聖人」、その次には「賢人」の時代があったと説いています。
「真人」は努力することなく、100歳の天寿と全うしたが、
時代が下がるに従って100歳の天寿を全うすることが困難になったと言われています。
インドの知識があると、「賢人」は真理の光が25%しかないのですから、
100歳を生きるために大変が努力が必要になると、容易にわかるでしょう。
いずれにせよ、中国の黄帝も4つの時代があったといっているのです。
また現代ではハーマンカーンという未来学者が
「観念的時代」「観念論的時代」「現実主義的時代」「超現実主義的時代」と
4つに分けて歴史や、文化を考えていかなければならないと説いています。
ここでも4つですが、特徴的なのはこの4つはぐるぐると回って、
悪い時代の後には、良い時代が来るといっていることです。
つまり、真理の光が25%の時代の後には、真理の光が100%の時代がやって来るといっているのです。
現代は最後の時代ですから、この時代の後には再びよい時代がやってくるというのですから、
あまり悲観したことでもないのかもしれません。
我が国の神話でも、天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸(アマノイワト)にお隠れになって、
この世は闇となった、と書かれています。
人々はたいそう困ったそうです。
その時、思金神(おもいかねのかみ)という思慮の深い神様があらわれて、
常世(とこよ)の長鳴鳥(ながなきどり)という、夜明けを告げる鳥を集めて鳴かした、とあります。
その後、あれやこれやありますが、この後は皆さんも知ってのとおり、
タジカラオノミコトが天岩戸を開いて天照大神の手を執つて引き出し、
その時から、日の光もあらはれ、大地も微笑み、神も人と交はった、のだそうです。
私は、これも予言だと思っています。
今、この予言のとおり、時代は変わろうとしています。
古い時代の価値観は終わり、新しい時代の価値観が生まれようとしています。
その為には、はじめに長鳴鳥の声があちらこちらで聞こえなければなりません。
日の出の遠くないことに気づいて、それを告げる声が上がらなければなりません。
東京支部の「ともにいきる=共生」という目標は、
競争原理に打ち据えられた現代の文明、滅び行く価値観に対し、
その終わりを告げる声として宣言したいとおもっているです。
今だ明けぬ暗い世に、夜明けを告げる時の声の一つになればよいと思っているのです。
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■第404回支部研修会報告■
11月23日の支部研修会は三浦宏明先生を講師に迎えました。
『頚部調整の考え方と具体例』 頚部の解剖学的構造に基づいた観察、調整を講義していただきました。
【観察1(立位)】
頚部の前後左右回旋の確認。
痛み、違和感のある箇所をよけるように動作するのを見逃さないようにします。
【観察2(仰臥位)】 立位の観察で当たりをつけた範囲の頚椎X点
を観察、変位のある椎骨を特定します。
その後、緊張のあったX点と照らし合わせ、頚椎を直接観察します。
椎骨の変位があっても、手応えがやわらかい場合は、
変位している側の斜角筋など、複数の関節をまたぐ筋肉の緊張を考えます。
変位があり、且つ、その椎骨が硬く感じる場合は、椎間筋の緊張の可能性があります。
※肩こりは、調整後の仰臥位での確認で、
C1〜D3くらいまでの椎間筋がグラグラに弛んだ感じが出ればよい。
【調整】 圧痛のある箇所にそっと触れ、抑制します。
最初にX点を抑制する(場合によっては足のX点で腰部の緊張を解いて)ことで、
変位のある頚椎周囲表面の大きな筋肉の緊張を解くのです。
変位のある頚椎の椎間筋に張力をとるように頚部の角度をとり、
押し、緩め、竹をしならすような刺激を加えて弛めます。
頚部に限らず、その箇所の構造や、痛みなどの構造がイメージできていると施術も的確に決まります。
臨床例として「肩こり」「目の異常」「顎関節」「顔の歪み」「寝違い」なども紹介され、
冒頭の体節構造などの講義とあわせ、大変充実した内容となりました。
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■第405回支部研修会報告■
12月10日の支部研修会は星野一彦先生に迎えました。
『横隔膜操法』 この日の講義は「横隔膜」の仕組み/役割などの話から始まり、
そして身体の各部分へのその影響をふまえた上での様々な調整法を学ぶ機会となりました。
たくさんの話、そして調整法を講義いただいた中から抜粋して以下に掲載します。
調整の初めに手掌を使って脊柱の弾力を観察します。
受者に合った圧の加減を決め、硬いところがあれば、圧定したままでリズミカルに可動性を与えます。
(床に置いたボールを上から押さえその手掌に反発を感じるような刺激)
横隔膜の異常はD8,9付近に出ることが多く、
そこに可動性を付けておくとその後のすべての調整がしやすくなります。
横隔膜は胸部と腹部を分けており、
その胸部と腹部の圧を揃えるのが調整のポイントです。
例えば腹圧が高すぎて腰痛につながっている場合があります。
受者の両手を、胸とお腹にそれぞれ置き、
お腹に置いた手の上から腹部を刺激します。
呼気に合わせて徐々に沈めていきます。
胸へも手を置くのは刺激がそこで止まるので
的確に横隔膜への働きかけが決まります。
坐骨を挙げる調整も、
大腿部を横隔膜に向けて角度を取ることによって、横隔膜調整になります。
均整法は角度を工夫するだけで、様々な調整へ応用が可能になります。
星野先生はたくさんのそうした話をされながら講義してくださいました。
【研修会の模様はDVDとして記録され、お買い求めもできます。
これまでの研修会のものとともに次回研修会の時にお求めください】
研修後は会場近くで、星野先生を囲んでの支部忘年会が開催されました。
店内からあふれるほどの方が参加され、
互いの労をねぎらい、笑い合い、均整談義に花を咲かし、
そして「よいお年を」と手を振り解散しました。
みなさん、どうぞよいお年を。
新年もどうぞよろしくお願いいたします。
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■19年1月の行事■
(1)第406回支部研修会
・日 時 1月14日(日)午後13時〜17時
・場 所 笹塚区民会館 京王線笹塚駅徒歩7分
http://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/kmkaikan/km_sasazuka.html
・講 師 西脇幸宏先生
・内 容
第一部『第一回:百名均整師を目指す/施術に於ける基本技術』
第二部『相関関係を見つめる』
今年始めの研修会は、西脇先生をお招きして 日頃どこか置きに忘れてしまっているかもしれない、
均整法の基本的な技術の再確認を講義していただきます。
施術に行き詰まった時、 ふと基本に立返ってみると思わぬよい刺激が効果
的に受者に与えられる事があり、
学生からベテランの先生方まで幅広くその需要はあると思います。
均整法でよく耳にする言葉のひとつに「相関関係」があります。
ある箇所を変化させる為に別の箇所に刺激を加え調整する技術です。
それは経絡同様に解剖生理学では説明しづらい分野かもしれません。
しかし、確かにそこにそれはあるのです。
私見ですが、相関関係とは身体の(例えば筋肉や骨格の)
互いに拮抗しあう二つ以上の器官の事を差すのだと思います。
人が片足で立つと、もうひとつの足や両手をある角度に広げ、
首や胴体を捻らせなんとかバランスを保とうとします。
片足だけで立っているのではなく、身体の全てを歪ませ運動しているのです。
均整法では「故障箇所を補う為の他の箇所は、故障箇所に相関した歪みをおこしている」と
くつろぎ傾斜圧でもいうように、
その別の箇所の運動制限を解除する事でも身体を変化させる技術があるのです。
その「相関関係」について第二部にご講義いただきます。(文責:矢作)
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【今後の支部研修会】
『東京・神奈川合同支部研修会』
2月/3月の支部研修会は神奈川支部と合同で開催いたします。
交流を深める為、そして支部を発展させる為にも、貴重な情報交換などできたらと思います。
※開催日時/場所が通常と異なっておりますのでご注意ください。
尚、3月(講師:大村先生/神奈川県にて開催)の詳細は次回の支部便りに掲載します。
・日 時 平成19年2月12日(月曜祝日)13:00〜
・会 場 池袋身体均整学園
・講 師 大村慶人先生
・講 題 「身体均整法基本操法18技法」
次々回は大村慶人先生により、第103回全国講習会の内容を再びご講義いただきます。
講習会に参加できなかった方、そしてより深く間近で大村先生の手を学びたい方、
貴重な機会になる事と思います。
【DVDについて】
東京支部では支部研修会の様子をDVD化して安価にて希望者におわけしてます。
入手方法については、現在のところ支部研修会の会場のみです。
在庫を残さないという方針から、1ロット10枚ほどしか作っていませんので先着順ということになりますが、
希望者が何人かまとまれば増販することもします。
遠方にお住まいの方や、支部研修会に出られない方など、郵送もいたします。
入手ご希望の方はお申し出ください。
◇連絡先◇ 毛利之子
【支部研修会のテーマについて】
東京支部では、支部研修会の講題について、皆様からの意見を随時受け付けております。
今年は「百名均整師を目指す」をテーマにした講題も考えておりますので皆様の希望をお聞かせください。
また、支部便りに載せたい告知や情報などありましたら、担当の矢作までご連絡ください。
◇連絡先◇ 矢作智崇
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(2)第158回手技研究会
新年明けましておめでとうございます。
昨年度は研究会及び勉強会にご参加いただきありがとうございました。
本年もよろしくおねがいいたします。
・日 時 1月18日(木)午後7時〜9時
・場 所 中野区大和町1−65−4増田ビル2階 ザ・均整法せいたい
JR高円寺駅北口下車徒歩7分
http://map.yahoo.co.jp/pl?
p=%C3%E6%CC%EE%B6%E8%C2%E7%CF%C2%C4%AE%A3%B1%A1%DD%A3%B6%A3%B5%A1%DD%A3%
B4&lat=35.70650583&lon=139.65365083&gov=13114.17.1.65.4
・講 師 池田 勝/金井周二
・内 容「健康博覧会トレーニング:座位による調整法」
(3)手技勉強会 受者が納得し、整者が納得し、第3者が納得する「3つの納得」の為を目標に実践しています。
受者の施術料は、初回〜3回まで1,000円、4回以降3,000円。
事故がおきた時に無料の場合は賠償保険の対象にならないためにこのようにしています。
ご了承ください。
・日 時
1月4日(木)午前10時〜午後9時
1月11日(木)午前10時〜午後9時
1月18日(木)午前10時〜午後6時
1月25日(木)午前10時〜午後9時
・場 所 手技研究会と同:ザ・均整法せいたい
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■黒田ノート研究会■
東京支部では黒田ノートの研究会をスタートさせます。
従来より毎月テーマを設けて支部研修会を開催して来ましたが、
さらなる均整法の理論と技術の向上のため、 亀井先生の講義の研究会という形で新たな活動をスタートさせます。
100名均整師を目指す経験の浅い方、ベテランの先生方にも積極的に参加していただき、
日々の臨床に役立つことはもちろん、やがては均整法の発展に寄与できる活動としてゆくことが目標です。
研究のための資料として、姿勢保健均整師会の理事を勤められた黒田長一先生(黒川瀞雄先生ではありません)の
残された詳細な手書きのノートがあります。
晩年の亀井先生の全国講習会の講義テープを聞いて文章に起こしたものです。
これを紐解き、将来は東京支部の活動の成果として出版できたらと思っています。
興味をもたれた方・参加を希望される方、要望や意見がありましたら御連絡ください。
この研究会への多数の方の参加をお待ちしています。
◇連絡先◇ 馬場久宏
第34回全国講習会(運動系の基礎知識・救急法2)/第35回全国講習会(運動系の基礎知識・救急法3)
第36回全国講習会(十二種体型1・刺激の原則)/第37回全国講習会(十二種体型)
第38回全国講習会(十二種体型3・内界十二型)/第39回全国講習会(均整法の研究・神経調整への道)
第40回全国講習会(足の姿勢と躯幹の関係)/第42回全国講習会(運動系の反射)
第43回全国講習会(神経系操縦の臨床的技術)/第1回実技特別研修会(反射と反応と刺激の原理)
第2回実技特別研修会(刺激の実技指導)/第3回実技特別研修会(叩打法による筋肉反射)
第4回実技特別研修会(伸びの反射)/第5回実技特別研修会(震動操法)
第6回実技特別研修会(下腿関節の反射)/第7回実技特別研修会(上肢関節の反射)
第8回実技特別研修会(関節の調整)/第8回実技特別研修会(関節の調整)
第9回実技特別研修会最終回(背骨の関節・リンパ操法)/森原先生リンパ操法講義
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■連 絡■
支部運営の有志募集
支部委員と共に活動する有志を募集しています。
都合のよい日時の参加でも可能です。
事務局、支部委員までお問い合わせください。
【研修班】【広報班】【DVD班】【資料班】
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■あとがき■
あけましておめでとうございます。
今年も、歴史ある均整師会東京支部の支部便りを大事にしていきたいと思います。
昨年は研修会に参加される人数が大幅に増えました。
今、身につけている技術や知識に奢る事なく、 より理想的な施術者、均整師として勉強を続ける姿勢を持ち続け、
よりたくさんの人にそれを還元していけたらと思います。
みなさまにとって素晴らしい一年となりますように。(矢作)
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